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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)8014号 判決 1986年7月18日

原告

江夏輝一

吉田芳雄

江夏徳保

右三名訴訟代理人弁護士

松田道夫

松田節子

杉原裕臣

被告

大阪市街地開発株式会社

右代表者代表取締役

山下正行

右訴訟代理人弁護士

松浦武

畑村悦雄

小林俊明

右訴訟代理人松浦武復代理人弁護士

福居和廣

主文

一  原告らの主位的及び予備的請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(主位的請求)

1 原告らと被告との間で、被告が別紙第一物件目録記載の区分所有建物の管理者たる地位を有しないことを確認する。

2 原告らと被告との間で、原告江夏輝一は金三七五万三八八八円、原告吉田芳雄は金二六四万二三二八円、原告江夏徳保は金一六四万一二七六円の昭和五七年八月一日から昭和五八年七月三一日までの間の各管理費名下の被告に対する債務が存在しないことを確認する。

(予備的請求)

3 被告を別紙第一物件目録記載の区分所有建物の管理者から解任する。

4 訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

(主位的請求)

1 原告らは、昭和五六年八月一日、別紙第一物件目録記載の区分所有建物(大阪駅前第四ビル、以下「本件ビル」という。)の内別紙第二物件目録記載の各専有部分につき区分所有権を取得した。

2 右に先立つ、同年七月二七日、本件ビルの建築分譲事業施行者である大阪市の招集により区分所有予定者集会が開催され(以下「本件集会」という。)、第一号議案である本件ビルの管理規約案(以下「本件規約案」という。)は、原告らの反対により昭和五八年五月二一日法律五一号による改正前の建物の区分所有等に関する法律(以下「旧建物区分所有法」という。)二四条一項の要件を満たす規約としては成立しなかつた。それにもかかわらず、本件集会では、これが有効に成立したとして第二号議案以下が順次審議され、第五号議案の管理費用案、第六号議案の被告の本件ビル管理者としての選任案がそれぞれ可決された。

3 被告は、本件集会により同年八月一日付で本件ビルの管理者として選任されたと称し、同日から昭和五七年七月三一日までの間(以下「昭和五七年度」という。)の管理費名下に原告らに対し、原告江夏輝一(以下「原告輝一」という。)については金三七五万三八八八円、原告吉田芳雄(以下「原告吉田」という。)については金二六四万二三二八円、原告江夏徳保(以下「原告徳保」という。)については金一六四万一二七六円をそれぞれ請求している。

4 しかしながら、本件集会における第二号議案以下の各議案は、いずれも本件規約案が旧建物区分所有法上の規約として成立することを前提とするものであり、本件規約案が右の意味における規約としては成立していないから、第二号議案についての本件集会の決議はいずれも無効又は不存在である。

よつて、原告らは、被告との間で、被告が本件ビルの管理者たる地位を有しないこと及び原告輝一は金三七五万三八八八円の、原告吉田は金二六四万二三二八円の、原告徳保は金一六四万一二七六円の管理費名下の被告に対する債務の存在しないことの確認をそれぞれ求める。

(予備的請求)

5 仮に被告が旧建物区分所有法一七条一項により管理者として有効に選任されたとしても、以下の事由からして被告は本件ビルの管理者として不適格である。

(一) 被告の役員及び従業員は、ビルの管理業務に関する経験、能力を全く有しない大阪市の退職職員又は出向職員がその多くを占め、従つて、設備、警備、清掃、荷捌場の各業務等の現場業務をすべて下請業者に作業委託し、被告従業員が本件ビルの管理に関与する部分は殆どなく、被告が本件ビルの管理者として介在する実益は皆無に等しい。それにもかかわらず、本件集会における第五号議案(管理費用案)においては、人件費として管理要員一四人、一人当り平均年額金三四〇万円、合計金四七六〇万円も計上され、昭和五七年度決算によれば合計金四九四八万三二三円を支出している。右管理要員数は必要人数よりはるかに多く、また人件費額としても退職職員の再就職先の給与として極めて異常な高額給与となつている。

(二) 被告が管理者として管理を行なつている大阪駅前第二ビルの清掃業務の作業委託に関し、被告が従前作業委託していた訴外株式会社大阪サービスセンターは、かねてよりその作業委託費が高いとの批判があつたため、被告は一旦右業務の作業委託を入札制に切替え、その結果、やはり同社がこれを落札したところ、右ビルの区分所有者が独自に業者から見積書を取り右落札額より約金三〇〇〇万円低額の見積書を提示するや、同社は作業委託費を落札額より一挙に金二五〇〇万円も引下げたことがあつたため、区分所有者の不信感がつのり、結局右作業委託業者が変更されたことがある。また、同じく、被告が管理者として管理する新谷町ビルでは、被告は清掃業務作業委託費として金一〇二〇万円を計上しながら実際には業者に金五二〇万円しか支払つておらず、これを知つた同ビル区分所有者は資料の提出を要求したが、被告がこれに応じなかつたため、同ビル区分所有者は被告の請求する管理費の二割を差引いた額を管理費として支払う旨決議し、以後同額を管理費として支払つている。かように、被告は直接管理業務に関与しないばかりか、作業委託先を恣意的に選定し、右業者と通謀して高額の作業委託費を計上し、その一部を自社に留保している。

(三) 被告の役員の在任期間はその一部を除き極めて短期間であり、被告の実体は大阪市の幹部職員の天下りの受皿であり、役員報酬、退職金の支給機関に過ぎない。被告は前記のとおり必要以上の人件費、作業委託費を計上し、これにより右役員報酬等を支給しているものである。

(四) その結果、本件集会において決定された昭和五七年度の月額管理費は別紙管理費一覧表記載のとおりであり、同種区分所有ビルの管理費と比較すると、単位面積当りの費用は少なくとも約一・五ないし二倍にも達する不当に高額なものとなつている。なお事務所と店舗との間にも約一・五倍前後の不合理な格差を生じている。

よつて、原告らは予備的請求として現行建物区分所有法二五条二項により被告を本件ビルの管理者から解任することを請求する。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実を認める。

2  同2の事実の内、昭和五六年七月二七日本件集会が開催されたこと及び第二号議案以下が順次審議され、第五号議案の管理費用案、第六号議案の被告の本件ビル管理者としての選任案がそれぞれ可決されたことは認め、その余は否認する。

3  同3の事実を認める。

4  同4の事実中、本件集会における第二号議案以下の各議案はいずれも本件規約案が旧建物区分所有法上の規約として成立することを前提とするものであることは否認し、その余は争う。

5  同5冒頭部分を争う。

(一) 同5(一)の事実の内被告の役員、従業員の多くを大阪市の退職職員又は出向職員が占めていること、被告が本件ビルの設備、警備、清掃、荷捌場各業務等を下請業者に作業委託していること、本件集会における第五号議案(管理費用案)において人件費として管理要員一四人、一人当り平均年額三四〇万円、合計金四七六〇万円が計上され、昭和五七年度決算では人件費として合計金四九四八万三二三円が支出されていることを認め、その余を否認ないし争う。

本件集会における昭和五七年度予算は大阪市が作成したものであるが、大阪市は本件ビルの管理者の職務内容として総務(区分所有者集会、運営協議会等の運営事務等)、経理(管理費等の会計事務)、管理(本件ビル敷地、共用部分の管理運営事務、作業委託に関する事務)、技術(施設管理事務)等を想定し、所要人員として右各職務分類毎に順次三名、二名、六名、三名の合計一四名を見込み、所要経費としては大阪駅前第三ビルの昭和五五年度区分所有予定者集会における管理費予算として計上された人件費単価に六パーセント程度の上昇を見込んで計算している。

被告の業務は①本件ビルを含むビルの管理と②駐車場等の営業に大別され、更に事務分担としては右①内部の各ビル共通事務と、右①及び②の共通事務がある。その内右②の営業業務に係る直接人件費及び役員報酬等を除く七〇名分の人件費については、これを共通の経費として一括処理し、これを別紙共通経費分当表、同配賦百分率に基づいて分当し、それぞれ各ビルが負担することとしている。昭和五七年度に被告が支出したビル管理にかかる人件費は総額金二億一四一〇万三五〇八円であり、これを右により分当すると本件ビル管理に要する人件費は金四九四八万三二三円となる。

(二) 同5(二)、(三)の各事実を否認する。

(三) 同5(四)の事実の内昭和五七年度の本件ビルの月額管理費が本件集会において別紙管理費一覧表記載のとおりと決定されたことを認め、その余を争う。

(四) 本来管理者の選任及び解任は区分所有者団体の自治に委ねられているのであり、現行建物区分所有法二五条二項の裁判所の管理者解任権は右区分所有者団体の自治に委ねていては区分所有者全体の利益にならない特段の事情がある場合に発動されるべきものである。この点、被告は本件集会で圧倒的多数の区分所有予定者により選任され、現在もなお管理者として業務を遂行しているものであり、右の意味での特段の事情はなく、解任事由は存しない。

三  抗弁

1  本件集会の決議による管理者の選任及び管理費の決定。

(一) 本件ビルの建築分譲事業は大阪市が公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(以下「市街地改造法」という。)に基づき、大阪市都市再開発事業の一環として実施したものである。そして施行者たる大阪市は昭和五七年七月三一日市街地改造法四〇条に定める工事完了公告を行ない、その結果、管理処分計画において定められた建築施設(以下「権利床」という。)の譲受予定者は、同法四一条により右工事完了公告の日の翌日である同年八月一日に各専有部分の区分所有権を取得した。また、右権利床以外の大阪市所有の建築施設部分(以下「保留床」という。)につき右工事完了公告までに大阪市と売買契約を締結し代金も支払つた保留床譲受予定者も、右売買契約の定めにより右同日各専有部分の区分所有権を取得した。そして同年七月二一日時点における権利床譲受予定者は六一名、保留床譲受予定者は二一名であり、残余部分の所有者たる大阪市を併せると右時点における全区分所有予定者数は合計八三名であつた。

(二) ところで、同年八月一日に区分所有予定者が専有部分の区分所有権を取得し、その使用も開始できることとなつていたため、右同日からの本件ビルの共用部分の管理、利用等についての定めが必要であつた。そこで大阪市は同年七月二一日付で前記区分所有予定者全員に対し本件集会の招集通知を発送するとともに右集会に付議される第一号ないし第七号議案を送付した。

(三) 同年七月二七日開催された本件集会においては、全区分所有予定者八三名(全床面積五万五一一二・四二平方メートル)の内書面による議決権行使者六名を含む六四名(床面積合計五万二八三九・一六平方メートル)が出席したが、第一号議案である本件規約案は原告らを含む数名の反対により旧建物区分所有法二四条一項に定める規約としては成立するに至らなかつた。

(四) しかし、第六号議案の管理者の選任については、原告らを含む数人の反対があつたが人数、議決権数において圧倒的大多数の賛成により旧建物区分所有法一七条一項に基づいて被告が本件ビルの管理者に選任された。

(五) また、第五号議案である昭和五七年度の管理費用案も右同様に可決された。これによれば昭和五七年度の月額管理費は別紙管理費一覧表記載のとおりと決定され、従つて原告らの支払うべき同年度の管理費は別紙管理費計算書記載のとおり原告輝一は金三七五万三八八八円、原告吉田は金二六四万二三二八円、原告徳保は金一六四万一二七六円となる。

2  本件集会の決議の効力

本件集会は区分所有予定者が区分所有者となる昭和五六年八月一日の五日前に開催されているが、以下の理由により右集会の決議は区分所有者集会の決議と同一の効力を有するものと解すべきである。

(一) 本件ビルのような大規模複合用途区分所有ビルにおいては、その利用、管理に関する定めが不可欠のものであるところ、昭和五六年八月一日には区分所有予定者八三名が一挙にその各専有部分の区分所有権を取得し、専有部分及び共用部分の利用も可能となる上右同日からの管理費用等を負担することとなつていたのであるから、その利用関係を調整し、円滑に運用するために予め利用、管理に関する規定を定めておく必要性があつた。

(二) 本件集会は、区分所有予定者が区分所有者となつた右八月一日の僅か五日前という極めて接近した時期に開催されており、現に本件集会の招集通知が発せられた同年七月二一日から同年八月一日までの間に区分所有予定者に変更はなく前記八三名全員が八月一日に区分所有者となつている。しかもその内権利床譲受予定者六一名は本件集会当時市街地改造法四〇条の工事完了公告さえなされればその翌日には当然に区分所有権を取得しうる地位にあつたものであり、また保留床譲受予定者二一名の内二〇名は本件集会までに、残一名も同月三一日の工事完了公告までに代金を支払つているのであるから、いずれも本件集会当時実質的に区分所有者たる地位にあつたものというべきである。

(三) 大阪市は本件集会の五日前までに区分所有予定者全員に対し議案、説明資料を送付して集会を招集しており、また本件集会前に入居説明会等を開催して議案の説明を行なつている。そして本件集会においても各議案は個別に審議採決が行なわれ、いずれも圧倒的多数の賛成により可決されているから、手続的にも旧建物区分所有法に適合している。

3  追認

被告は昭和五七年一一月二五日、昭和五七年度決算等に関する大阪駅前第四ビル区分所有者集会(以下「昭和五七年度決算集会」という。)を招集し、同集会において被告が作成した昭和五七年度決算書等の諸議案について区分所有者の圧倒的多数の承認を得た。これは被告が本件ビルの区分所有者から同ビルの管理者であることを追認されたことに外ならない。

四  抗弁に対する原告らの認否

1  抗弁1(二)の事実の内、大阪市が昭和五六年七月二一日付で本件集会の招集通知を発送し、第一号ないし第七号議案も送付したことを認め、その余を争う。同1(三)の事実の内、第一号議案の本件規約案が原告らの反対により旧建物区分所有法二四条一項の規約として成立に至らなかつたことを認める。同1(四)、(五)を争う。本件集会においては本件規約案が規約として有効に成立したものとして同規約案二五条、二六条により被告を管理人に適任している。被告も右規約案に基づいて業務を行なつている。従つて、管理人の選任決議等は本件規約案が旧建物区分所有法上の規約として成立していることを前提としてなされたものといわざるを得ない。

2  同2冒頭部分を争う。

(一) 同2(一)を争う。区分所有予定者が区分所有者となつた時点で直ちに本件ビルの使用が開始されるのではなく、右時点以後営業開始のための諸内装工事が開始され、約二か月後に営業が開始されるものであつたから、その間の管理は暫定的に行ない、その間に区分所有者集会を招集することは可能であつた。従つて本件集会を昭和五七年七月二七日に開催する必要性は全くなかつた。

(二) 同2(二)、(三)を争う。

第三  証拠<省略>

理由

一原告らが昭和五六年八月一日本件ビルの内別紙第二物件目録記載の各専有部分の区分所有権を取得したことは当事者間に争いがない。

二本件集会の開催とその決議の効力

1  請求原因2の事実の内、昭和五六年七月二七日、本件集会が開催されたこと及び第二号議案以下が順次審議され第五号議案の管理費用案、第六号議案の被告の本件ビル管理者としての選任案がそれぞれ可決されたこと、同5(四)の事実の内、本件集会において昭和五七年度の本件ビルの月額管理費が別紙管理費一覧表記載のとおりに決定されたこと、抗弁1(二)の事実の内、大阪市が昭和五六年七月二一日付で本件集会の招集通知を発送し第一号ないし第七号議案も送付したことは、当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実及び<証拠>を総合すると、次のとおりである。

(一)  本件ビルは市街地改造法に基づき(同法は昭和三六年六月一日から施行され、昭和四四年六月一四日に施行された都市再開発法により廃止されたが、同法附則四条により同法施行の際、現に市街地改造事業に関する都市計画において施行区域として定められている土地の区域について施行される市街地改造事業についてはなお市街地改造法はその効力を有するものとされていることは当裁判所に顕著である。)、大阪市が大阪市都市再開発事業の一環として建築分譲したものであるが、右事業対象区域内の土地、建物の所有権、賃借権者等はその希望により管理処分計画において本件ビルの一部(権利床)を譲受けることができた。そして大阪市が昭和五六年七月三一日市街地改造法四〇条の工事完了公告を行なつた結果、原告らを含む右権利床譲受予定者は同法四一条により同年八月一日各専有部分の区分所有権を取得した。また右公告までに大阪市から右権利床以外の保留床を購入し代金を支払つた保留床譲受予定者も右売買契約の定めにより右同日各専有部分の区分所有権を取得するに至つた。そして同年七月二一日時点における権利床譲受予定者は六一名、保留床譲受予定者は二一名であり、残余部分の所有者である大阪市を併せると、右時点における区分所有予定者は合計八三名であつた。

(二)  大阪市は同月三一日の工事完了公告、翌八月一日の区分所有権の発生を控え、本件ビルの管理規約等の設定、管理者の選任等を行なうため、同年七月二一日付で右区分所有予定者全員に対し本件集会の招集通知を発送するとともに右集会に付議する第一号ないし第七号議案を送付し、右はいずれも右同日頃各区分所有予定者に到達した。そして大阪市は本件集会までに議案説明会を四回、入居説明会を数回開催し、区分所有予定者に対し各議案の骨子を説明した。

(三)  本件集会は同月二七日午後三時から本件ビル一八階三号室において開催され、全区分所有予定者八三名(床面積合計五万五一一二・四二平方メートル)の内書面による議決権行使者六名を含む六四名(床面積合計五万二八三九・一六平方メートル)が出席した。集会では先ず議長団が選出され、集会の決議の効力は工事完了公告の翌日である同年八月一日に発生する旨決定された。その後第一号議案の本件規約案について審議が開始され、大阪市から簡単な議案説明が行なわれた後、原告輝一、原告吉田の子であり同原告の代理人として出席していた訴外吉田昭及び訴外林国靖らから「充分討議したいが招集通知から集会までの期間が短かく時間的余裕がなかつた、広い床面積を持つ大阪市や大企業の意思で決議を強行されては困る、規約が成立しなかつたらどうするのか」等の質問、意見が出され、これらに対し大阪市が答弁したが、訴外近畿日本ツーリスト株式会社から規約案の各条項毎に採決してはどうかとの動議が出された。そこで、議案全体についての採決が行なわれ、原告ら外数名の反対があつたが、議長は賛成多数として本件規約案は原案どおり可決された。

(四)  次いで第二号議案も賛成多数で可決され、第三、第四号議案は運営協議会に一任することに決定された。第五号議案である昭和五七年度(昭和五六年八月一日から昭和五七年七月三一日まで)の管理費用案についても、大阪市の趣旨説明に続いて訴外日本タイプライター株式会社の質問とこれに対する答弁がなされた後、賛成多数として原案どおり可決され、その結果、同年度の月額管理費は別紙管理費一覧表記載のとおりと決定された。

(五)  第六号議案の管理者の選任については、大阪市が管理者として被告を推薦したのに続いて前記林及び原告輝一から未収金が出た場合の措置、選任すべき管理者としては他の民間会社もあることからして管理者において適切な経費の節約がなされるべきである旨の質問、反対意見が出され、これに対して大阪市が答弁をした後採決が行なわれ、被告を管理者とすることが拍手をもつて確認された。

(六)  第七号議案の運営協議会委員の選任については議長団に一任することが拍手でもつて確認され、以上で本件集会は閉会された。閉会後大阪市から規約設定同意書の提出が求められたが、原告らはこれを拒否して現在に至つている。

なお各議案の採決に際し、議長は賛成者数、その床面積数を確認しなかつた。

(七)  本件集会終了後、同集会議長団は同日付で被告に対し本件ビルの管理者として管理することを依頼し、被告はこれを承諾した。

3  本件ビルの区分所有予定者は工事完了公告の翌日である昭和五六年八月一日に各専有部分の区分所有権を取得しているのであるから、その以前の同年七月二七日に開催された本件集会は旧建物区分所有法の規定する区分所有者集会とは、ただちにいえないところである。そこで先ずこの点に関する右集会の決議の効力につき判断する。

(一)  <証拠>によれば、大阪市を除く前記八二名の区分所有予定者の内保留床譲受予定者を中心とする約二〇パーセント(専有部分の床面積合計約一万平方メートル、七八区画)の者が同年八月一日から各専有部分において営業を開始したこと、そのためこれらの者は工事完了公告前から専有部分の引渡を受け内装工事等の準備を行なつたこと、その間右工事完了公告日までは本件ビルの建築請負人である「大阪駅前市街地改造事業第四棟新築工事、鹿島建設、フジタ工業、淺沼組共同企業体」の定めた大阪駅前第四ビル入居管理規定に従つて本件ビルの共用部分の利用等が行なわれてきたこと、他方権利譲受予定者らは右八月一日以後に専有部分の引渡を受け、その後営業等の準備を開始するようになつていたことが認められる。しかし、右同日から直ちに営業を開始する者が全体の約二〇パーセントを占め、その余の区分所有者も開業準備を開始することが可能であつたというのであるから右同日以後の本件ビルの利用形態は従前のそれとは質的に異なるものとなり、これに伴う本件ビルの利用に関する混乱も予想される状況にあつたものというべく、しかも、右建築請負人の定めた管理規定は工事完了公告日までの暫定的なものであり、右八月一日以降の管理に関する定めはなかつたのであるから、同日以降の本件ビルの管理に関する根本的な定めを設定する必要性は極めて高かつたものというべきである。

(二)  また本件集会は右八月一日の僅か五日前に開催されており、<証拠>によれば、本件集会を招集した同年七月二一日から同年八月一日までの間に区分所有予定者に変動はなく、全員が八月一日に区分所有権を取得していること、権利床譲受予定者六一名は本件集会当時市街地改造法上の工事完了公告さえなされれば同法によりその翌日に当然に区分所有権を取得するものとされていたこと、保留床譲受予定者二一名の内二〇名は本件集会当時既に売買代金を支払済であり残一名も工事完了公告までに代金を支払つたことが認められるから、本件集会は、実質的には右八月一日当時の区分所有者と同視しうる者により構成されていたものということができる。

(三)  しかも、本件集会はその五日前までには前記2の(一)ないし(五)のとおり、当時の本件ビルの実質的な管理者ともいいうる大阪市により招集通知がなされ、本件集会では右招集通知に示された第一号ないし第七号議案しか審議されていないから旧建物区分所有法に定める集会招集手続には適合しているものと考えられる。

(四)  以上の事情及び本件集会においてその決議の効力は同年八月一日に発生する旨決定されていることからすれば、右集会の決議は、その決議自体が適法、有効になされたならば、右八月一日現在の区分所有者による区分所有者集会の決議と同一の効力を有するものと解すべきである。

4(一) 本件集会時において適用されるべきことが当裁判所に明らかな旧建物区分所有法二四条一項では規約の設定は区分所有者全員の書面による合意によるべきこととされているから、原告らが規約設定同意書の提出を拒否している以上、第一号議案の本件規約案が本件集会において賛成多数として可決されたとしても同法に規定する規約としては成立していないことは論を俟たないところである。ただ、右管理規約案の可決は後記のとおり区分所有予定者の持分(即ち専有部分の床面積割合)の過半数を超える賛成によるものであることが認められるから、右決議は旧建物区分所有法一三条に定める共用部分の管理に関する決定としての効果を持つものと解すべきである。しかし、同法上の規約とはいえないのであるから右規約案の規定する集会の決議要件等は同法の規定に優先することはなく、従つて本件集会における第二号議案以下についての決議の効力等は同法の規定に従つて決すべきである。そして同法三一条、三〇条、一〇条、一七条によれば区分所有者集会の決議及び管理者の選任は区分所有者数及び専有部分の床面積の割合による議決権の過半数で決せられることとなる。

(二)  この点第五号議案である昭和五七年度の管理費用案は賛成多数で、第六号議案の管理者の選任については拍手をもつて確認され、正確な賛成者数、床面積面は確認されていないが、<証拠>によれば当時の床面積の二分の一以上を占める大阪市も右賛成決議に加つており(この点は当不当の問題はありえても違法ではない。)、右採決において賛成者数は区分所有予定者数、議決権ともに少くとも過半数を超えていたことが認められるから、右決議はいずれも有効なものと認められ<る>。

(三)  以上によれば、被告は本件集会により適法に本件ビルの管理者として選任され、また昭和五七年度の月額管理費は別紙管理費一覧表記載のとおりと決定されこれに基づいて原告らの負担すべき同年度の年間管理費を計算すれば別紙管理費計算書記載のとおり原告輝一は金三七五万三八八八円、原告吉田は金二六四万二三二八円、原告徳保は金一六四万一二七六円となるから、原告らの主位的請求はいずれも理由がない。

三解任請求について

1  請求原因5(一)の事実の内被告の役員、従業員の多くを大阪市の退職職員、出向職員が占めていること、被告が本件ビルの設備、警備、清掃、荷捌場の各業務等を下請業者に作業委託していること、本件集会において人件費として管理要員一四人、一人当り平均年額金三四〇万円、合計四七六〇万円が計上され、昭和五七年度決算では人件費として合計四九四八万三二三円が支出されていることは当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実及び<証拠>を総合すれば次のとおりである。

(一)  本件集会において賛成多数で有効に可決された第五号議案(昭和五七年度管理費用案)は大阪市が大阪駅前第三ビルの例を参考にして作成したもので、その支出項目中には作業委託費として設備、警備、清掃、荷捌場の各業務についての予算が計上され、一般管理費の内の人件費として管理要員一四人、一人当り平均年額金三四〇万円、合計金四七六〇万円の予算が計上されていた。その後昭和五七年一一月二五日昭和五七年度決算集会が開催されたが、右時点における区分所有者数は大阪市所有の保留床の分譲により計一七五名に増加していた。同集会において被告は本件ビル管理に関する管理業務会計、利用業務会計につき各別に昭和五七年度決算案昭和五八年度(昭和五七年八月一日から昭和五八年七月三一日まで)予算案を作成、提出し、いずれも出席者数、議決権数の過半数以上の賛成により可決承認された。その後昭和五九年二月九日昭和五八年度決算等に関する大阪駅前第四ビル区分所有者集会(以下「昭和五八年度決算集会」。という)が開催されたが、右時点における区分所有者数は更に増加して二〇二名に達していた。同集会においても被告は管理、利用各業務会計につき各別に昭和五八年度決算案、昭和五九年度(昭和五八年八月一日から昭和五九年七月三一日まで)予算案を作成、提出し、いずれも出席者数、議決権数の過半数以上の賛成により可決承認された。その内管理業務会計については支出項目中に人件費が計上されており、昭和五七年度決算案では金四九四八万三二三円、昭和五八年度予算案では金五三〇〇万円、同年度決算案では金五一八一万二九七四円、昭和五九年度予算案では金五三〇〇万円となつていた。なお、利用業務会計については支出項目中に人件費は計上されておらず、また、作業委託費は管理、利用各業務につきいずれも計上されていた。

(二) 被告は昭和五六年八月一日以降、前記二の2の(三)のとおり本件集会において可決された本件規約案に基づいて本件ビルの管理を行なつてきているが、右管理に関する業務内容は管理業務と利用業務に大別され、管理業務は総務(集会、運営協議会等の開催事務)、経理(管理費の収入支出事務)、管理(委託業務計画、契約、業務監督事務)、技術(施設管理事務)等に関するものであり、利用業務は本件ビル三階の駐車場、広告枠等共用部分の運用に関する業務である。その具体的内容は別紙業務内容表記載のとおりである。被告はその内管理業務については設備、警備、清掃、荷捌場の各業務等を、利用業務については駐車場業務及びその清掃作業業務等を業者に作業委託し、その余の管理、利用各業務を被告が現実に行なつている。

(三)  被告は昭和五七年四月当時、本件ビルの外大阪駅前第一ないし第三ビル、谷町ビルの管理者としてその管理を行なうとともに、営業業務として所有者たる大阪市から賃借した本件ビルの地下三階の駐車場の経営等をも行なつているが、これらの全業務に必要な従業員七〇人(役員を除く)を別紙共通経費分当表記載のとおり配置し、本件ビルの管理に関しては本社計理課に一名、本社施設課、防災課に二名、本件ビル内に事務所のある管理第四課に七名を置いている外右各ビルの共通管理要員として計一三・五人を計算上配置している。右管理第四課には係はないが、次のとおり一応の担当事務とその要員を定め、適宜相互に応援する体制となつている。

(1) 課長一名

事務の総括。

(2) 総務担当一名

区分所有者集会、運営協議会、同協議会の各部会の開催等の手続。

(3) 経理担当二名

管理、利用各業務についての収入、支出の帳簿記入、本社計理課との連絡事務。

(4) 管理費担当一名

管理費の計算、納付書の作成、発送、督促、管理費台帳の記入等。

(5) 光熱水費担当一名

管理費中の光熱水費の計算、納付書作成、発送、督促等。

(6) 契約担当

補修工事、備品購入等の契約に関する一切の事務。

(四)  本件ビルの管理業務会計についての昭和五七年度及び昭和五八年度の各決算案の作成に関し、被告が人件費の計算として採用した方法は次のとおりである。即ち、前記別紙共通経費分当表に基づいて、被告の営業業務及び被告が管理する各ビルの管理にそれぞれ必要な計算上の人員数の前記被告全従業員数(七〇人)に対する割合を計算した別紙配賦百分率を作成し、被告が支出した各年度の全人件費(役員報酬を除く)に本件ビルの右配賦百分率上の割合(一八・一四パーセント)を乗じた額を前記各決算案における人件費として計上していたものである。

(五)  被告は、本件ビルの管理業務の内設備、警備、清掃の各業務を訴外オーエスシー建物管理株式会社(以下「オーエスシー」という。)に、荷捌場業務と利用業務の内三階駐車場業務を訴外大阪防災管理株式会社にそれぞれ作業委託しており、外には管理、利用各業務について多くの作業委託を行なつている。オーエスシーは右設備、警備、清掃の各業務について、本件ビルの工事完了公告前から、建築請負人との間で作業委託契約を締結しその業務を行なつてきていたが、被告は右建築請負人からオーエスシーの実績を聴取し、運営協議会の経理部会と協議した上同社への作業委託をそのまま引継ぐこととし、それ以来右業務に関しては他の業者から見積書を提出させて同社のそれと比較検討するようなこともないまま同社への作業委託を継続している。

(六)  運営協議会は本件規約案に基づいて設置された管理者業務の審査、監督等を任務とする機関であり、本件ビルの区分所有者の中から選任された委員により構成されている。同協議会内部には経理、管理、運営の各部会が設置され、経理部会が管理費用見込額の調査研究、管理者業務の執行の監査、積立金の運用に関する事項を担当することになつている。従つて被告が作業委託を行う場合や予算案、決算案を作成する場合には事前に右経理部会の審査、運営協議会の承認を得た上で実行し、更に各年度における決算集会において区分所有者の承認を得るという手続をとることになる。

(七)  昭和五六年九月九日第一回運営協議会が開催されて以来、昭和五七年度には運営協議会八回、各部会計一二回、昭和五八年度には運営協議会六回、各部会合計八回と開催されてきた。被告はこれら協議会、部会において管理、利用各業務についての詳細な報告を求められ、また、作業委託費等の支出をできる限り削減して管理費を低く抑制するように強く指示され、右指示に従つて前記設備、警備、清掃の各業務を除く他の業務についての作業委託に関しては数社の業者の見積書を提出させて比較検討を実施したり、更に既に作業委託契約を締結した分についても業者に対し必要要員数を削減させて作業委託費を減額させたりする措置を採つた。その結果、昭和五八年度決算においては、前年度より荷捌場業務に伴う使用料収入、三階駐車場使用料収入が増え、従つてその作業量が増加したにもかかわらず、その作業委託費は減額されたほか、管理、利用各業務会計に関する昭和五七、五八年各決算案において作業委託費の支出額はいずれも同年度予算額を下回り、全体としても黒字決算となつたため、本件ビルの月額管理費は本件集会による別紙管理費一覧表記載のとおりの決定額のまま三年間据置かれている。

3  人件費について

(一)  右の各事実からすれば、本件ビルはその区分所有者数、床面積からして規模が大きく、その管理に関する業務は広範囲にわたり繁雑なものというべきであつて、その業務内容からすれば本件集会時において大阪市が計上した管理要員数(一四人)、被告が内部で配置した要員数(別紙配賦百分率で計算すると70×0.1814≒12.7(人)となる)は不当に多いものとも思えない。

(二)  また本件集会において大阪市が計上した一人当り年額金三四〇万円の人件費予算自体社会通念上必ずしも高額とはいえない。被告が昭和五七年度決算以後の人件費算出のため採用した計算方法では、現実に本件ビルの管理に従事した従業員に支払われた給与の合計額とは一致しなくなり、これを右(一)で計算した管理要員数(約一二・七人)で除すると一人当りの年額人件費は昭和五七年度決算案では約金三九〇万円(4948万323÷12.7=389万6088)、昭和五八年度決算案では約金四〇八万円(5181万2974÷12.7=407万9761)となりやや高額といえなくはないが、右計算方法は一応の合理性を有していること、もともと被告は営利会社であり右人件費により本件ビルの管理に関する被告の利益を獲得することになること、人件費計上については運営協議会、経理部会の審査を受け、区分所有者集会の承認を得ていること、そして<証拠>によれば管理業務会計決算中の支出項目における人件費の割合は昭和五七、五八各年度においてそれぞれ五・九パーセント、五・五パーセントに過ぎないことが認められることからして、不当に高額なものとは解されないところである。

(三)  なお、<証拠>によれば、本件ビル管理要員の内施設課員及び管理第四課員各一名が退社し、昭和六〇年四月現在はその補充をしないまま管理を行なうことができたことが認められるが、<証拠>によれば、右状態のままで本件ビルの管理を行なうにつき必ずしも十分ではないことが窺われ、また右欠員を補充するか否かは被告の今後の判断によるものであり、仮に補充しないとしても相対的に労働強化になるのであるから直ちに人件費が二名分減額されるものとは必ずしも認められず、人件費にいかに反映するかもまた今後の問題であるものというべきであるから、右事実をもつて従前の管理要員数、人件費が不当なものであつたとは認め難い。

(四)  以上によれば、被告(ないし大阪市)の人件費計上に関し、被告に不正な行為その他職務を行なうに適しない事情があるものとは認められない。

4  作業委託費について

(一)  前記認定のとおり本件ビルの運営協議会及び経理部会は業務の作業委託に関し被告に詳細な報告を求め、その内一部については他の業者の見積書を取らせて検討させ、また既に委託したものについても作業委託費を減額させたりしており、被告の業務に対する監督機能を十分に発揮している。また、被告も右協議会、経理部会の指示に従つて本件ビルの管理を行なつているのであるから、他に被告が運営協議会の指示に正当な理由もなく従わない等の事実を認めるに足りる証拠もない本件においては、被告が作業委託業者と通謀して作業委託費を水増し請求しているとの原告主張も認められないところである。

(二)  この点<証拠>によれば、被告が管理者となつている大阪駅前第二ビルにおいて、同じく警備、清掃業務を作業委託していた前記オーエスシーの作業委託費が高過ぎるとして同ビルの区分所有者らから批判があつたため、被告は右業務の作業委託を入札制に変更し、昭和五六年一二月一八日右入札を実施したところ、結局右オーエスシーが落札したが、同ビル区分所有者らが他の業者から右落札額より約三〇〇〇万円も安い見積書を取りこれを昭和五七年一月初め頃提示すると、右オーエスシーは右落札額から約二五〇〇万円を値下げしたため、右区分所有者らが被告に対し作業委託業者の変更を要求し、被告がこれに難色を示したため事態が紛糾したが、結局右業務の作業委託はオーエスシーから他の業者に変更されるに至つたことが認められる。しかし、右事実のみから直ちに被告とオーエスシーが通謀していたものと認めることはできないし、本件ビルの管理に関しては右のような事実は認められないのであるから、右事実から被告が本件ビルの管理者として不適格であるとすることはできない。

(三)  なお原告らは被告が新谷町ビルの管理に際し作業委託費を金一〇二〇万円として計上していたにもかかわらず業者には金五二〇万円しか支払わなかつたこと等を主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

(四)  以上によれば、作業委託に関しても被告に解任事由が存しないことが明らかである。

5  原告らは本件ビルの単位面積当りの管理費が同種区分所有ビルのそれの少なくとも約一・五倍ないし二倍に達する不当に高額なものとなつている旨主張しているが、<証拠>に記載されているビルはいずれも賃貸ビルであり、またそこに記載された共益費の内容も不明であるから右各ビルは本件ビルとの比較の対象とはなしえず、また<証拠>における他のビルの管理費に関する供述も右同様に比較の対象とならず、従つて原告らの右主張を認めるには充分ではない。また原告らは本件ビルの管理費は事務所と店舗の間に不合理な格差があるとも主張するが、それが不合理であることを認めるに足りる証拠もない。

6  結局、原告らの主張は本件ビルの管理費が不当に高額であるとするに帰着するが、右を認めるに足りる証拠は存しない。付言すると、原告らは本件ビルの区分所有者として運営協議会等に参加し、区分所有者集会等正規の手続内において被告の管理者としての適格及びその解任の問題を討議すべきものというべきである。

よつて、原告らの被告の解任請求も理由がない。

四以上によれば、原告らの主位的、予備的請求は失当であるから、いずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官小北陽三 裁判官辻本利雄 裁判官塩川茂は転補のため署名押印をすることができない。裁判長裁判官小北陽三)

第一物件目録

大阪市北区梅田一丁目五番地

一 鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄骨造地下四階、地上二五階、塔屋二階ビル

延床面積 九八、八〇八平方メートル

(名称)大阪駅前市街地改造ビル第4号館

(略称)大阪駅前第4ビル

第二物件目録

原告江夏輝一 二階一二号室 四九・六〇平方メートル

地下一階三一号室 一一五・九一平方メートル

原告吉田芳雄 地下一階一四号室 一一二・九二平方メートル

原告江夏徳保 地下一階三〇号室 七〇・一四平方メートル

管理費一覧表<省略>

共通経費分当表<省略>

配賦百分率<省略>

管理費計算書<省略>

業務内容表<省略>

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